積算はしているのに、なぜか儲かっていない会社の話

積算して見積もりを作成しても利益が残らない中小製造業を表したイメージ

「うちはちゃんと積算して見積もりを出している」

そう思っている社長ほど、実は危ないケースを何度か見てきました。実務の中で関わったある製造業の会社も、まさにそうでした。

決算書を見て、初めて気づいた

その会社は、部品ごとにきちんと積算して見積もりを出していました。感覚だけで値段を決めているわけではありません。

けれど、年間の決算を見ると、ほとんど利益が出ていませんでした。税理士の先生から指摘されて、社長も初めて「あれ、おかしいな」と気づいたそうです。

積算はしている。なのに儲かっていない。なぜでしょうか。

見積時の積算額から時間・検査・修繕・設備・人件費・水道光熱費が差し引かれ、利益が減る流れを示した図

強みだったはずの「短納期対応」が、実は赤字の原因だった

この会社の強みは、故障時の短納期対応でした。急な依頼にもすぐ応えてくれる、という信頼で仕事を取ってきた会社です。

ただし、その短納期対応は基本的に外注先に頼っていました。当然、外注費は高くつきます。急ぎの仕事ほど、外注先への支払いも割高になるものです。

問題は、その割高な外注費を、価格にきちんと反映できていなかったことです。「対応できることが強み」だと思っていたものが、価格設定に落とし込めていなかったために、動けば動くほど利益を削っていく構造になっていました。

さらに、多額の借入金もありました。借金が多いこと自体も問題ですが、それ以上に、その利息を払ってなお利益が残る価格設定ができていれば、赤字は避けられたはずだと感じています。

個人的には、クレジットカードに似ていると思っています

この話をするとき、私はいつもクレジットカードの例えを使います。

クレジットカードの利用明細確認になぞらえ、製造業の原価項目を一つずつ確認する様子

使っている瞬間は、何も考えずに使ってしまう。そして月末、27日あたりになると、高額な請求が来て「え、こんなに使った?不正利用されてるんじゃ」と一瞬身構える。

でも、明細を見ると、全部心当たりがあるものばかりです。不正利用なんてどこにもない。ただ、使った瞬間には見えていなかった積み重ねが、まとめて可視化されただけなんです。

価格設定も、これと同じだと思っています。「自分ではちゃんとやっているつもり」でも、外注費や借入金の利息のように、普段は意識しない支払いが、気づかないうちに利益を削っている。決算書という「明細」を見て初めて、その事実に向き合うことになります。

見たくない現実と、どう向き合うか

大事なのは、「見たくない、聞きたくない現実」から目を逸らさないことです。

クレジットカードの利用明細を毎月ちゃんと見る人が、無駄遣いに気づいて直していけるように、原価を一つひとつ洗い出し、そこに向き合った会社だけが、適切な価格設定にたどり着けます。

特に、特注品は汎用品と違って、この作業がとても大変です。仕様ごとに条件が変わるため、集めなければいけないデータも、作らなければいけない資料も、驚くほど多くなります。

次回は、その特注品の価格交渉について、実際にどう進めればいいのかを書いていきます。


この記事は、中小企業診断士としての実務経験をもとに構成しています(登場する会社は特定できないよう内容を一部変更しています)。自社の価格設定に不安がある方は、無料営業診断で現状を確認してみてください。

伊澤司(中小企業診断士)のプロフィール写真

伊澤 司|中小企業診断士・上級ウェブ解析士。機械工具商社で製造業向け営業に携わった経験を生かし、受注生産型の中小製造業の営業・価格転嫁・業務改善を支援しています。

macriをフォローする
価格転嫁

コメント